IoTって?その発想と着眼点
「創発」がもたらす新たなものづくり
ビジネスモデルを大きく変える可能性。
- ムーブプレス:IoTを新しいトレンドと捉えている人は多いと思います。 従来の「IT戦略」「ICT」との違いは何か? 捉え方として、効率化、省力化という概念に「価値創造のツール」という役割が加わったのかなという気がしています。 まずはIoTに関しての考えや、自社の取り組みをお聞かせください。
サファ IoTと前の時代の一番の違いは「availability(アベイラビリティ)」、可用性ですね。システムが継続して稼働できる能力。 昔は大手しか導入できなかったのですが、今や企業のサイズは関係ない。 センサ技術も簡単に手に入り、ネット環境はどこにでもありますから。
- 「アベイラビリティ」は今回のキーワードですね。 センサや無線モジュールの小型・低価格化により、今までつながっていなかった機器、 モノすべてにおいて、ネットやクラウドなどへの接続環境が整備され、誰でも平等に利用できるチャンスがある。 ところでIoTは多くの技術の複合体ですが、まずはクラウドの話から。 こちらは地域を問わず、価格も安くなって運用しやすくなっています。
今はクラウドのサービスやインフラは整っていて運用費も安い。 昔はサーバーもデータセンターでレンタルしなくてはならなかったが、今やサービスの形で提供されています。
- ただ、そうやって用意されたプラットフォームで戦うには、大手企業のほうが優位になるのでは?
お金をかけることよりスピード感が大事。今日決めたことを数日で改善できるような。 組み込み基盤にしても導入後、ソフトを変えられるように準備をすることでスピーディーな変化に対応できます。 テスラの電気自動車が、ファームウェアのアップデートで機能を追加できるようになりましたが、 こういった思考や手法は基本的にどんなハードでも可能です。
付加価値をもたらすIoT、メリットとデメリット。
- 企業がIoTに着手する一番のメリットは何だとお考えですか。
価格競争に勝てるという可能性ですね。 製品とソリューションをパッケージにして付加価値をつけることができますから。 その際に自社製品のデータ分析で判断する独自のノウハウを、プログラミングしてソフトに落としこむ。 ここで、うまく差別化を図れたら突出したユニークなパッケージができますよ。
- すでにものづくりを手がけている企業は、そういった付加価値をつけることで、 価格競争から抜け出す新しい道が開けるということですね。
さらに生産管理やメンテナンスに関しても、製品の中に計測するものを入れておけば、 ほっておいても24時間データが集積されて分析もできます。
- さらに分析した情報のセキュリティも重要です。
セキュリティについてはいつも考えています。夜も眠れないくらい(笑)。 当社ではサーバーとデータベースのセキュリティは、大手企業に任せています。 ただデータの漏洩には外部からのハッキングだけでなく、内部からのアクセスというパターンもある。 だから顧客のデータに関しては、社内での取り扱いルールが必要です。
- 今後は瞬時に世界中に広がるなど危険度は格段に上がっている。
当社では顧客のデータなど、クラウド上に必要な情報を1~2ヶ月分しか残さないようにしています。 リスクの分散ですね。それとクラウド上の情報については、アクセス場所をコントロールできるようにしていて。 今もログイン+カードが必要なシステムを制作しています。 これだとパスワードが漏れても、カードがないとアクセスできない。 ただその場合、セキュリティとユーザビリティのバランスが難しいので、ケースバイケースで対応しています。
- センシング能力が上がっていくだけでもずいぶん変わりますね。
IoTをフルに自動化すると危険です。IoTは設計したことしか測れない。 想定外のことが起こるとダウンしてしまう。 だからある程度、人を動かさないとダメ。
- 当社では仕事の進捗度を24時間365日、いつでもリアルタイムに見られるサービスを使っているのですが、 「いつも見られている気がして落ち着かない」とネガティブな意見もあります(笑)。
仕事ぶりを計測するよりは、人のサポートになるものがいいと思いますよ。 私たちの商品も、現場の問題を解決するものが採用されますね。
未知の可能性を秘めた市場の開拓に挑む。
手を動かし、頭を柔らかくする。そうすれば、掘り起こすことのできる情報や課題が見えてくる。 たとえば初心者向けのマイコンの本を買って読みながら、自分で実験してみる。 ものづくり企業の人達はスキルが高いので、自分で一度つくってみること。そこからいろんな課題が見えてくるはず。
- 従来の考え方だと決まったことしかできないが、たしかに具体的に手を動かすことで、 既成概念を変える多様なパターンが見えてきそうです。
それと自分の事業のコアは何かを考えること。どこまでを自社の既存機能で取り組み、 どこからをアウトソーシングや新たな人材の採用で賄うか、そこの見極めが大切です。
- プラットフォームは世界中で同じでも、アウトプットが変わってくれば面白い。 ぼくは仕事で島根によく行くのですが、そこで知り合った猟師の方は山にワナを仕掛けて、 獲物がかかったらメールが来る仕組みになっている。ふだんはITとは無縁なおじいさんなのですが(笑)。 ものづくりではないけど、これもひとつのIoTですね。
大学生にやらせてみるのもいいですね。欧米の学生には6ヶ月のインターンシップがある。 彼らを採用することで企業も新しいアイデアを得られる。 うちではMITから2人インターンを採用して、いくつかシステムをつくってもらった。 彼らの発想を生かしながら、新しいニーズを掘り起こせる。 それとIoTでは「Multidisciplinary Engineering」=複数業界でのエンジニアリング、つまり連携が大切です。