エンジニアのキャリアを活かし、IoTソリューション企業を設立
(~ 堺の元気!企業紹介 ~)

大手家電メーカーで技術開発を、IT企業でWEBと経営を学んで

アルドネットに入社したいとフランスからやってきたマルティネズ ビンセントさん(手前)。

1997年にフランスから来日したというアルドネット株式会社のサファ ローラン社長。 妻の母国である日本で暮らすことを決めた時、エンジニアとして培ってきたスキルを活かせる職場を探したといいます。 外国人スペシャリストを求めていた大手家電メーカーで採用され、技術研究所で12年間勤務しました。

「ここで研究者として、アイデアを具体化する技術開発に携われたのは、とても重要な経験でした。 プロジェクトの進め方など、日本企業独特のマネジメントについても学ぶことができましたね」。

その後、自分に不足していると考えたWEB技術を獲得するため、アメリカ人が経営する企業に転職。 3年間、アメリカ式経営のマネジメントに携わった後、2012年、堺市で産業系、工業系に特化したIoTソリューションを開発、 提供する会社を設立しています。

「起業することを具体的に意識したのは、IT企業に転職してからです。 家電メーカーは企業規模が大きすぎて、全体が見えませんでしたが、2社目のIT企業では顧客もお金の流れも全てを把握できました。 そこで、日本で経営することの自信をつけたのです」。

得意の産業系、工業系に特化してIoTソリューションを開発・提供

「面倒な税務や申請などを処理するには、日本人のパートナーがいたほうが心強い」とサファ社長は語る。

「全てをネットワークさせる」を意味する「All do net」が社名の由来だというアルドネット。 主に、ものづくり企業の事務処理や現場管理の効率化などをサポートすべく、例えば、現場で収集したデータを、 遠隔地からでも手元のスマートフォンなどでリアルタイムに確認したり、 または現場データを自動的に処理したりするクラウドサービスを提供しています。

サファ社長は「人材不足が課題となっている今日、IoT技術を必要とする企業は増えていますが、 一から開発すれば膨大なコストと日数がかかります。 そこで、当社では独自に開発したIoTソリューションのプラットフォームを用意。低コストで、しかも短期間での導入を可能にしました。 現在は、私がこれまで培ってきたスキルを活かせる、精密機械メーカーをはじめとした製造業に特化して事業を展開しています」と語っています。

事業領域を絞り込むのと同じく、営業圏を関西に絞り込んでいるのも、経営上の戦略のよう。 「以前は東京でも営業していましたが、コストばかりがかかって採算性が低い。 というのは、いくらIT時代とはいえ、きめ細かいコンサルティングのためにリアルに会うことが重要だと考えているからです。 現在の当社の規模では、まず関西でのビジネスに注力すべきだと判断しています」。

社会的信用を確保し、導入しやすい中小企業に注力

距離センサや振動センサなどのデータを手元のスマートフォンやタブレットに表示することが可能。 離れていても現場の状況を把握できる「アルドボックス」。

堺市に会社を設立したのは、妻の出身地だったからとサファ社長。 しかし、中小企業の集積地である関西に大きな魅力を感じています。

「大手企業では、なかなか決定権を持つ人に会えませんし、失敗を恐れて新しい取り組みに慎重になりがちですが、 中小企業とのビジネスは、実にダイナミック。社長の決断がとてもスピーディです。 つい東京に目を向けがちですが、市場が大きい代わりに競合も多い。 関西や九州などの首都圏外にも大きな可能性があると思いますね」。

ところで、日本で起業するうえで、外国人としてのハンディを感じたことはないのでしょうか。 「重視されるのは『信用』だと思いますが、私の場合、大手家電メーカーへの勤務実績があったことは幸運でした。 永住者ビザを取得していたことが、金融機関に口座を開くうえで役立っています。 また、さかい新事業創造センター[S-Cube]の入居企業だということも、社会的信用を得やすくなっていますね。 経営者はつい、自分の力で全てを片付けようと考えがちですが、成功するためには必要な時には助けてもらうことも大切です。 私もS-Cubeではさまざまな支援をいただきました」とサファ社長。 将来は、フランチャイズで国内外に事業の拡大を図ることを目指しています。